強制ソリューション

いまだに漢字2文字+カタカナ5文字以上を組み合わせると椎名林檎っぽいと思ってしまう病が治らない。きっともうこの先ずっとそうなんだろう*1

さて、遅ればせながらこちらの記事を拝読し、amanoiwato.info
こんなブコメを付けた。

作中で提示されていくネガティブ要素に対して、生活系まとめみたいな爽快な解決を求めてたんだなぁと今さら自覚した

http://b.hatena.ne.jp/entry/267290105/comment/tamilele

これについて長々と書き散らしたくなった。

未解決フィクション

『まれ』という朝ドラがあった。ネットを見る限りでは、賛否は3:7か2:8ぐらいで否の方が多かった、ような印象がある*2。私も否の方で、毎回きちんと見ていたわけではないが、それでも次々と新しい風呂敷を広げては片づけずにうっちゃっておくような展開と、あとギャグが肌に合わないこともあって日々イライラしていたものだった。『まれ』が終わってだいぶ経った今、たまたま冒頭の記事を拝読して、そのイライラが何に起因するものがが分かったような気がした。ブコメに書いた通り、「さんざん家庭内にネガティブな要素が積み上げられていくのに、それに対してスカッとする結末が用意されていないこと」だったのだと思う。

数年前、たいへん不健全ながら、生活系まとめ*3にどハマりしていた時期があった。仕事や生活がいろいろと行き詰まっていたときに、終電に揺られながらアンテナを巡回し、水を飲むようにさまざまな修羅場やトラブルを摂取した。生活系まとめの何がそんなに良かったのかというと、ちゃんと書けば短編~中編小説にでもなりそうな密度の話を数レス程度で読める手軽さと、分かりやすい勧善懲悪であった。非がある存在は何かしらの罰を受け、善なる書き手は報われる*4。トラブルはほぼ根本的な形*5で解決する。そういう「スカッとする」話をまとめないと当時の私のような読み手は離れていくからだろう*6、どのまとめサイトでもおおむねそんな話がまとまっており、アンテナから適当にリンクを踏めばきれいにオチのついたご家庭トラブルを読むことができた。

現実ではそうそう物事は解決しない。第三者が思いつくような解決策はだいたい当人もすでに試している(そしてダメだった)か、何らかの理由で試すこともできないものだったりする。だからこそ、分かりやすい悪がいて、それに対する分かりやすい解決手段があって、それを実践して解決する、という物語はやんやの喝采で受け入れられるのだと思う。

『まれ』に賛意を示す声の中に「現実はそんなものじゃん」というものがあった。両親の問題(いわゆる毒親)も夫(いわゆるエネ夫)やその家業の問題も、仕事と家庭の両立も、私が見ていた範囲ではスカッと納得のいく解決がなされなかったり、あるいは一番大変であろう時期の描写を「そして○年後」ですっ飛ばしてしまった『まれ』。確かに現実はそんなものなんだろう*7。しかしフィクションだからこそ、「DQN返し」や「武勇伝」のような、多少現実離れしていても溜飲の下がるようなウルトラCがあってほしかったのだな…とあらためて自覚した次第。

余談だが、同じ朝ドラの『ごちそうさん』では、主人公と小姑との諍いを「小姑が自発的に農家の後妻となって出ていく」という方法で解決していて唸ったものだった。考えてみれば結構ひどい。

煩悶エクスプレッション

たぶん以前から持ち合わせていたものの、生活系まとめ行脚の中で自覚し、病状が悪化したのが「あらゆる相談事に解決を求める」という性質である。繰り返しになるが、現実ではそんなに容易く解決しないし、自分が思いつくような解決策は他人だって考える。そういう認識があるにもかかわらず、リアルの友人の相談を受けるとついついあの手この手の解決策を提示してしまったり、悩みを吐露している文章を見ると「こうしたらいいのでは?」とコメントしたくなったりする(実際書いちゃうこともある)*8

自分自身、別に悩みを相談したいわけではなく、解決策を求めているわけでもなく、ただネガティブな気持ちを発散したいという動機でチラ裏的な文章を書くことがあり、それに対してアドバイスを戴いて「お、おう…」という気持ちになったこともある。その自覚があってさえ、他人の文章にはついつい「こういう解決策があるよね!!」と言いたくなってしまうのだ。罪深い。まことに罪深い。【解決済み】がマークされる爽快感にはかくも抗いがたい。

最近このへんのことを痛感するのが、はてな匿名ダイアリーの常連投稿者*9である大学生のエントリーを読む時だ。

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自分の外見に悩み、道行く美人との彼我の差に悩み、学業に悩み、親が金持ちであることにすら悩む。彼はいつでも悩んでいる。そして、こういってしまうと身も蓋もないのだが、彼の悩みの数々はある程度一般化できるというか、青年期を超えた人の大多数が通過してきている、と言えなくもない*10。そのためか彼の文章には、読むとついうっかりアドバイスしたくなってしまう、おそろしい魔力がある。アドバイスを求めていないことが推察できるのに、である。彼が書き落とした増田に遭遇するたびに、ブコメやトラバで「こうしたら?」と言いたくなる気持ちがムクムク沸きあがる。罪深い。マジ罪深い。

突然コンクルージョン

長々と愚にもつかないことを書いてまいりましたが、結論としては『あさが来た』はなかなか面白いよね、ということになります。特に主人公の姉・はつが現状いろいろと苦境にあるので、この先どんなフィクション的解決がもたらされるのか楽しみにしている。あと雁助はんと亀助はんが可愛い。

*1:最近見つけた椎名林檎っぽい言葉は「日没サスペンデッド」

*2:見ていたサイトやサービスにもよるのだろうが

*3:Hagex-day.infoみたいな、生活板や家庭板、鬼女板の書き込みをまとめたやつ

*4:なお、たまに書き手がめちゃくちゃバカ(という設定)の時もあり、そういう場合はもちろんスレで叩かれ、実社会(という設定)でも罰を受けることになる

*5:離婚、転居、法的手段など

*6:そういえば、解決していない話題にはタイトルに【未解決】と付けろと要望するコメントを見たことがある。闇が深い

*7:本当に大変だった時期のことは他人に語れない、ということもあり得るし

*8:補足すると、「自分が」解決「したい」わけではなく、「今ここにある問題が」解決「されて」ほしいという感覚

*9:匿名の増田で常連とはこれ如何に

*10:もちろん程度問題はあるし、また悩みなんて主観的なもんで、本人がつらいならつらいで無理に相対化する必要もないんじゃねーかなと思う