ご本読んだ
ご本というか、ごKindleです。
- 作者: 葉真中顕
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2014/10/16
- メディア: 単行本
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で、『絶叫』。最近、著者・葉真中顕氏のデビュー作『ロスト・ケア』を面白く読みまして、ネットで書評やインタビューをいろいろと漁っていたところ*1こちらの新作に関する記事がいくつかあって、ムクムク読みたいきもちが膨らんできたためサクッとダウンロード購入して一晩で読み切っちまった。いやー、えがったー。面白かったー。
あらすじはこんなん。
平凡な女、鈴木陽子が死んだ。誰にも知られずに何カ月も経って……。
猫に喰われた死体となって見つかった女は、どんな人生を辿ってきたのだろうか?
社会から棄てられた女が、凶悪な犯罪に手を染め堕ちていく生き地獄、魂の叫びを描く!
ネタバレっぽくなっちまったので畳みます。
まあ読み始めた瞬間に宮部みゆきさんの『火車』を思い出しましたよね。死んだ/姿を消した一人の女性と、その足跡を追ううちに事件性を見出す刑事。社会からつまはじきにされる弱者と、それを食い物にする強者。金。システムの不備。などなど、共通するキーワードが多い*2。語り手は大きく2つに分かれていて、1つは捜査を担当する女性刑事・奥貫綾乃の視点。これが作中の現在。もう1つは死んだ女=「鈴木陽子」の過去を辿る形で、二人称(「あなた」)を使っている。綾乃パートでは現在から過去に遡り、陽子パートでは陽子の誕生から現在に向けて語られる。
ほんで中盤はけっこう淡泊というか、ストーリーが淡々と進んでいく。「陽子がこういうことをしました」→「ああ、そしたらこういうことになっちゃうんだろうな」→「そうなりました」という展開の繰り返しで、意外性もないので正直ちょっぴりタルい部分もあった。「読者の予想通り、悪いほう悪いほうへ堕ちていく陽子」という姿はゲップが出るほど読めます。ゲーフ。あと少し気になったのは地の文で、陽子パートはジットリ湿った感じの文体でとてもすてきなんですが、そこに生命保険やデリヘルの制度の話なんかが説明口調で突然割り込んでくるので腰が砕けた。綾乃パートのほうは狂言回し的役割だし気にならなかったんですが*3。
などと首をかしげながら読んだりもしていたんですが、最終章の疾走感の素晴らしさにそんなことどうでもE!!!となった。途中でちょっぴり失敗したカナーとか思ってすいませんでした。二人称の意味。陽子の死。居場所を求め続けた女が最後に行きついたところ。そしてラストシーンでは岡崎京子先生の『ヘルタースケルター』が頭に浮かんでいた。その身ひとつで抗い続けた女たち。眼球を残して煙のように消えたりりこと、猫に食われた死体になった陽子。
『ヘルタースケルター』はこんなモノローグで幕を閉じる。
タイガー・リリィの奇妙な冒険の旅が始まっていた
しかし それはまた別の機会に
陽子は死んだ。しかし冒険は続く。
読後はさすがにスッキリ前向きとは言えないが、妙な充足感があって後味は悪くないと思った*4。すげー面白かったです。つみやm葉真中先生のますますのご活躍を楽しみにしておりマシソン*5。
★3行で★
- 陽子ちゃんチョロい
- 綾乃ちゃんも割とチョロい
- 不倫率たけぇな